「君があと100日のあいだに東京を救うんだよ。」
彼女はそう言った。
「ああ、そのつもりだ。」
ぼくはそう答えた…。
物語というものは唐突に始まるのが世の常であって、この場合も例に洩れず、この二言三言の会話でぼくは、このさき展開されることになる壮大な物語の主人公になってしまったのだ。
いや、主人公という表現をすると彼女は笑うかもしれない。ぼくはただ歯車の一つに過ぎないのだから。
それにしても、本当にぼくはバカだ…。このときは本気で東京を救おうと思っていたことは事実だが、まさかこんなことになるとは予想もしていなかった。まさかこんなとんでもない役回りで…
公務員採用試験を受けることになるとは!!!!!!
ここで読者はこの突拍子もない展開にいささかついていけなくなってきていることだろう。いや大丈夫だ、ぼくだって全然ついていけてない。まともな思考回路をもっているひとなら、「東京を救う」ことと「公務員採用試験を受ける」ことが同じ目的だと考えることはできないだろう。
どこから、そういう話になったのかを話すととても長くなるし…なにより当事者であるこのぼくでさえ全容を把握できていないのだから、今はそのとについて触れることを避けておこう。
とにかくぼくは東京を守るために公務員採用試験を受けることになってしまったのだ。
できれば平和な人生を願うぼくだが、物語の主人公になってしまった以上、ありとあらゆる出来事に巻き込まれるのはおおかた既定事項である。その辺はすでに覚悟はできているが、はたしてぼくがこの役をどこまで演じきれることができるか…いや、おそらく演技だけではすまされないのかもしれないが、とにかく、やれやれである…。